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Book of the Year 2022

今年ももう終わり。コロナ禍の戦争に終始した一年となってしまった。
今年出版された本はあまり読めなかったが、
手帳に記した読み終わった本リストによると57冊読んだようだ。
週に1冊のペース。そんなもんでしょうか。
そんな中で今年一番面白かった本。

「中動態の世界 意志と責任の考古学」國分功一郎著 医学書院
中動態の世界.jpeg

哲学者の國分功一郎による中動態の世界としたい。
出版年によると2017年、連載されていた時期を考えると5年以上経過していることになるが、
自分にとってはとても新鮮で、刺激に満ちた内容であった。

かつてのインド=ヨーロッパ語系には、能動態⇔受動態の対立ではなく、
「中動態」という態があり、言語学的にはさらに過去では能動態⇔中動態という
文法的な対立だったとの事。
ラテン語やギリシャ語を学んだ人は知っている事のようだが、
わたしには初めての概念で、目から鱗だった。
行為や言葉による状態の表現の枠組みが大きく揺るがされ、
固定観念に囚われていたのだなあと実感する。

する⇔されるの対立ではなくて、その(動詞的)行為の完了が自分に向かって終わるのが中動態、
自分の外で終わるのが能動態となるらしい。
その辺の文法的な詳しいのは措くとして、
そもそも能動受動以外の態があるということが日本語話者には不思議すぎた。

副題の通り、意志が重要なポイントで、大昔のラテン語には能動態と中動態の態しかなかったという。で、するされるの言語学的に区別をしてなかったのだから、「意志」という概念が現在と大きく異なるのではないかというのが國分氏の話であった。
さらにこの本、「精神看護学」の雑誌に連載されていたものをまとめた本ということが、
とても興味深い。われわれ医療従事者が考えるべきことがもっとたくさんあると
そう教えてくれるいい教材かもしれない。今後何度か読み返すことになると思う。
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