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簒奪の「簒」の下にある字形は「么」なのか

日本漢字学会に入会して1年が経過した。
昨年は学術大会があったが都合が合わず参加できず、
会誌を読むだけの会員活動であった。

さて、漢字学会の会員らしく漢字の話題を書くことにする。
掲題の文字であるが、簒奪の簒である。
この下部にある字形は「ム」の場合もあるが、「么」に書かれることが多い。

この「ム」に「ノ」が付いた形はバランスが悪く、
文字として何か間違っていそうであるが、
「么」は「幺」の俗字形である。「幼」という字からも連想できるが、
そもそも「ちいさい」「おさない」「こまかい」などの意味を持つ字である。
麻雀用語で出てくるタンヤオチュウ(1と9の牌を使用しない)は「断么九」と書く。
小さい数字を「么」が表しているわけだ。

また、もう一つの意味として「麽」がある。
中国での簡化字政策により「麽」の省略体として「么」が使用されている。
「麽」はあまり見慣れない文字であるが、仏教の経典などに登場する文字のようで、
「麽事(なにごと)」「什麽(そも、いかに)」などのように疑問詞を作る際に使用する。
この「麽」も正字は「麼」であり、やはり「幺」を構造に含み「小さい」などの意味を持っている。

ということで、「么」はバランスの悪い字で間違いなのではなく、
ちゃんと「ちいさい」とか「おさない」と意味をもった字なのでした。

さて、本題の簒奪の「簒」の下部の構造はこの「么」なのかということであるが、
結論から言えばこれはかなりの確率で間違いであろうと思われる。

正しくは下部が「ム」の文字である。
「ム」は「私」を意味し、私位を奪い取ることを意味する。音は「算」に従う。

なぜ余計な「ノ」がついた文字が本流となり、「ム」の文字は表示できないのか
真相はよくわからないが、JIS規格に登録される際に誰かが間違ったのだろう。
仏教に通じた人が作成していて、「麽」の文字に引っ張られて覚え違いをし、
うっかり登録してしまったと想像するとすこし和む。

こんなことを考えながら次に簒奪と書く際には、
「么」と書こうか、「ム」と書こうか思案してみるのも一興かと思う。
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